▼館長の写真日記 令和5年10月14日付け2023/10/14 08:30 (C) 最上義光歴史館
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実はタイミング悪く、この工事が始まる前に展示室で雨漏りが発生、それが出入りの新聞記者の知れるところとなり、写真付きの記事になってしまいました。当館の学芸員は、これでしばらく他所から展示品を借りることができなくなる、と嘆いていましたが。工事をすれば大丈夫!!とアピールしたいところなのですが、当面の間、だいたいその、人の噂になる75日間くらいは厳しいかも。
ところで私の場合、なぜか異動する先々の施設で雨漏りに遭遇し、バケツだの雑巾だのを床に並べるのを目にしています。バケツを並べたりするのは落語とかの世界のこと程度に思っていたので、21世紀の世の中でもこうなのかと、ちょっと驚きました。
雨漏りの原因というのは意外に様々で、当館の場合は、防水シートの劣化と雨水排水管の構造上の不具合によるものです。かつて音楽ホールのある某施設にいた時は、そのバックヤードの天井が雨の重みで剥がれ落ちてきたのですが、屋根の形状が複雑なため板金の隙間から雨漏れが発生したものです。また、築50年に近い建物の某本部にいた時は、4階部分の壁の亀裂から染みこんだ雨水が、3階の事務室の天井に回り漏れたものです。「壁際」や「窓際」にはだいたい管理職の席があるのですが、そこに落ちていました。山形などの寒冷地では隙間に染みた水分が、冬期間に氷結して膨張し、隙間が大きくなるのも一因です。いずれも以前から雨漏りが予見されており、前任者は対策を求めてはいたのですが、後回しにされていたようです。
これも個人的なことなのですが、以前、マンション管理組合の理事長を20年以上担っていたことがあり、その維持補修に管理会社とともに関わったのですが、やはり最初に必要なのがこの雨漏り対策です。屋根の防水シートの経年劣化に対する修繕なのですが、これがだいたい15年目あたり。当館は築30年を優に超えてはいるのですが、やっと屋根防水の大規模修繕を実施ということで、一般のマンションなどと比べると、持っているというか、時間の流れが違うというか。ちなみに丹下健三設計の赤坂プリンスホテル新館は、築28年で取り壊しました。こっちは時間の流れがいきなり早い感じです。
筒井康隆の小説に「横車の大八」というのがあります。大八はもともと腕の立つ大工でしたが、他人の仕事に横車ばかり入れるので疎んじられ、仕事は減るばかり。しかし、大八によると、建物にはそこを押すと全体が壊れるヘソという部分があり、いい家ほどヘソが一か所に集まっているという。新築する場合は壊すときのことを考えヘソを作らなければならない。しかし建物のヘソは、素人の目にはとまらないような場所に設けるため、ヘソをみつけ解体できるのは大八にかぎる、という話です。建物は丈夫で長持ちばかりがよいのではなく、社会環境に合わせスマートに解体できるのが大事ということで、この小説を学生の頃に読んで衝撃を受け、建設系の同級生にその設計思想を吹いて回ったことがあります。
またもや話が横道に逸れてしまったのですが、最後にいつものようにことわざを。ここはやはり「畳と〇〇は、新しいほどいい」ということわざでしょうか。昔なら新郎にこんなことを言っていたかもしれませんが、今どきこんなことを言ったら、どこからどう刺されることやら。これとは逆に、「味噌と女房は、古いほどいい」という、罪滅ぼしのようなことわざもあるそうです、あっ、これでは伏字にした意味がなくなってしまう。それでも物と人とを一緒にしてしまうのは問題なわけで。ところで博物館の場合、古いのがいいのか、新しいのがいいのか。少なくても「屋根と空調機器は、新しいほどいい」とは思います。
現在の工事の様子。なんか一夜城みたいですが、通常どおり開館しています。
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