ヤマガタンver9 > 府中刑務所奇談 あとがき

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▼府中刑務所奇談  あとがき

私が府中に流れ着いたのは二十四の時だ

一年ちょっとで 二度も転職し 浪々の身だった頃
インドに修行に行きたい衝動に駆られ バイトを探した
トヨタの期間工にも だいぶ心が傾きかけていたのだが
近場で (仕事が)軽くて 高給という条件に合っていたのが
それから 結局なんだかんだで 約九年間も勤め 
その間に 結婚・出産・子育ても経験した府中にあるガス屋だった
(勿論 出産は私ではなく家内の方ですが・・・)

仕事場は府中だったが 商圏は国分寺・小平近辺が多くを占めた
当時はまだ田園も多少残る多摩地区で かなり濃密な時間を過ごした
軽い仕事・・ とんでもない話だった
面接に行ったら 社員は社長だけ・・??
社長一人の会社に たった一人の社員として入社したのだ
その社長も 私が入社半年で長期入院することになり
西も東もわからぬ新入社員が経営を含む会社の全業務を担った
平均睡眠時間2.5時間という超売れっ子アイドルみたいなスケジュールで
それこそまさに不眠不休で半年の間 働きに働き続けた
当局が黙ってないからできないが 申請すればギネスものの残業時間だった

社長とは一体どんだけ飲んだんだろうか? 想像もつかない
出会った日(=面接の日) いきなり大ジョッキ5杯〜自宅コース
お互いに記憶がない どこでどんだけ払ったかも全然わからない
などという今から思えば笑うしかない夜は数えたらきりがない
青学のラグビー部の主将だった彼と私がウマが合わないはずがない
ワークマンで買ったお揃いの作業着で 日中はたっぷり汗をかき
夜になると それ以上に補給した
二人で知人の結婚式に呼ばれたとき 黒服+スポーツ刈りの二人
 『あいつら どこの組のもんだ』と陰口を叩かれた
その社長も数年前に亡くなった


東芝 サントリーをはじめ日本有数の工場が立ち並ぶ府中
でも 刑務所があるせいでもなかろうが歓楽街もなくひっそりとした街だ
この ひっそりとした街で 私は人生の濃密な時間を過ごした
忘れられない街だ
2012/01/26 08:43 (C) FPのひとりごと
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